福永武彦電子全集
2018年10月より順次配信中
 当サイトは1995年に設立された福永武彦研究会の公式ホームページです。
福永作品を愛する方、福永武彦について深く知りたい方は、どなたでも入会できます。


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福永武彦研究会 令和元年(2019年)度の会員(来年5月末までの1年間)を募集中ですNew!
 入会についての資格は特になく、福永武彦の人と作品に興味をお持ちであれば、どなたにも開かれています。数々の会員特典があります。詳細案内  
    
第179回例会開催案内
New!
  
第178回例会報告
New!
 
書影付き著作データ・小説に「小説風土」(完全版)(決定版)(新潮文庫版)を追加しました。New!    
  
◇生誕100年記念企画「福永武彦電子全集 全20巻」(小学館)New!
 2018年10月より配信が開始されました(第7巻まで配信中)。
  • 福永武彦 電子全集1(2018年10月配信):「草の花」体験、福永武彦の出発
  • 福永の出世作『草の花』を中心に、初めて単行本化された短篇集『塔』、学生時代に書かれた書簡など、作家・福永武彦の出発点とも言える、貴重な初期作品を完全収録。
  •   
  • 福永武彦 電子全集2(11月配信):『小説風土』、ロマンの創造
  • 福永自ら処女作と呼ぶ『小説風土』を初出版から決定版まで全4種を完全収録。対照により筆者苦心の手入れ痕も確認できる。
  •  
  • 福永武彦 電子全集3(12月配信):先鋭な実験『夜の三部作』、そして『愛の試み』
  • “暗黒意識"を主題にした『夜の三部作』、愛と孤独の様相を正面から描いたエッセイ『愛の試み』。福永文学の精髄に迫る。
  • 福永武彦 電子全集4(2019年1月配信):実験の継続、『心の中を流れる河』、『世界の終り』、そして『夢の輪』
  • 詩篇のような短篇集『心の中を流れる河』、『世界の終り』とそこから発展した長篇『夢の輪』を収録。
  • 福永武彦 電子全集5(2月配信):実験の展開、『廢市』、そして『告別』
  • 退廃的な田舎町での“青年のひと夏"を描いた「廢市」、ある大学教授の内的独白と死を描いた「告別」等、中短12篇を収録。
  •  
  • 福永武彦 電子全集6(3月配信):『ボードレールの世界』、わが同類 
  • 詩人・福永武彦が、自己の作詩体験に裏打ちされた“憂愁の詩人"ボードレール詩篇の分析と翻訳、解説、小伝等を収録。
  •  
  • 福永武彦 電子全集7(4月配信):戦前の文業(散文)、大河小説『獨身者』
  • 中学、高校時代の時代の校友会雑誌に寄稿した小文、未完作『獨身者』等、戦前に書かれた“青春の軌跡"をたどる。
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  • 福永武彦 電子全集9(5月配信):『完全犯罪』、推理小説の領域
  • 福永の“もうひとつの顔"「探偵小説作家・加田伶太郎」の作品を中心に、推理小説、エッセイ、翻訳作品などを収録。
  •    
  • 福永武彦 電子全集10(6月配信):『ゴーギャンの世界』、彼方の美を追い求めて
  • ゴーギャン作「かぐわしい大地」に圧倒され、終生追い続けたゴーギャンの謎。『藝術の慰め』など藝術評論も完全網羅
  •  
  • 福永武彦 電子全集12(7月配信):『忘却の河』『幼年』、童話
  • 愛の挫折と不在に悩む家族5人の葛藤を描いた『忘却の河』、“幼くして失った母"の原風景を描いた『幼年』、童話作品等を収録。
  •  
  • 福永武彦電子 全集13 (10月配信):『風のかたみ』、古典文学の継承
  • 『古事記』『今昔物語』等の現代語訳版に加え、王朝エンターテインメント小説『風のかたみ』を含む“古代ロマン"に満ちた一巻。
  •  
  • 福永武彦 電子全集15(8月配信):『別れの歌』、随筆の家としてI
  • 師・堀辰雄との交情を記した初随筆集『別れの歌』をはじめ、『遠くのこだま』、『枕頭の書』等の随筆に、対談集『小説の愉しみ』を収録。
  •  
  • 福永武彦 電子全集16(9月配信): 『夢のように』、随筆の家としてⅡ
  • 雑誌連載「十二色のクレヨン」を収録した随筆集『夢のように』や『書物の心』、最後の随筆集となった『秋風日記』を収録。
  •  
◇池澤夏樹氏に当研究会の顧問に就任していただくことになりました。
 
cafe impala 池澤夏樹氏の公式サイト
  
◇研究会の会誌「福永武彦研究 第13号」が発行されました。New!
 (内容)
 【特別例会講演記録】
   池澤夏樹氏「福永武彦 人と文学」(2017年6月11日)
 
 【考察】『福永武彦に於ける長編小説成立のための条件』林 雅治
 【福永武彦年譜(1949~1979)】三坂 剛
    その他  

 
◇福永武彦生誕100年特別企画の第1回として池澤夏樹氏講演会「福永武彦 人と文学」が、2017年6月11日(日)に神田神保町東京堂ホールにて開催されました。予約で満席となる盛況でした。日本経済新聞(4月29日朝刊)文化欄に福永武彦が大きく取り上げられ、池澤夏樹氏、当会会長のコメント記事とともに講演会についても紹介されました。

 
福永武彦「廃市」が復刊されました!

 小学館(P+D BOOKS)より。    
     
福永武彦「加田怜太郎 作品集」が復刊されました!
 小学館(P+D BOOKS)より。
 
福永武彦「夢見る少年の昼と夜」が復刊されました! 
 小学館(P+D BOOKS)より。
 
書影付き著作データ・評論に「ゴーギャンの世界」を追加しました。
    
研究会20代メンバーが核となって企画された同人誌「Nocturne No.2」が発刊されました。
 【特集】『海市』 

   
福永武彦「夜の三部作」が復刊されました!
    
・小学館(P+D BOOKS)より。池澤夏樹氏が解説を特別寄稿。池澤夏樹氏による解説文が掲載されています。
             
福永武彦「風土」が復刊されました! 
・小学館(P+D BOOKS)より。池澤夏樹氏が解説を特別寄稿。池澤夏樹氏による解説文が掲載されています。
   
福永武彦「海市」が復刊されました!
・小学館(P+D BOOKS)より。池澤夏樹氏が解説を特別寄稿。池澤夏樹氏による解説文が掲載されています。
          
福永武彦関連 新刊2点(2015/3/26)
 ・堀辰雄/福永武彦/中村真一郎(池澤夏樹編集 日本文学全集17)
 ・「草の花」の成立―福永武彦の履歴/田口 耕平
    

 




 

    
研究会の会誌「福永武彦研究 第13号」が発行されました。New!
   
 会誌購入を希望の方は、「研究会 会誌」のページをご覧下さい。
    
(内容)
 【特別例会講演記録】
  池澤夏樹氏「福永武彦 人と文学」(2017年6月11日)
 
 【考察】『福永武彦に於ける長編小説成立のための条件』林 雅治
 
 【福永武彦年譜(1949~1979)】三坂 剛
  
   その他

  
  *画像クリックで表・裏表紙の拡大画像にリンクします。

  
  


 
   
第179回例会 開催案内 New!

 日時:2019年11月24日(日)13時〜17時
 場所:川崎市平和館 第2会議室
 内容:
  ① 討論、『ボードレールの世界』
   *小学館電子全集第6巻、新潮社全集第18巻収録
  ② 会誌第14号配付。
   
  例会には、どなたでも参加できます。会員以外で聴講を希望される方は事前に研究会に申し込みをお願い致します。
 参加・聴講費:1000円(会員、学生は500円)
 お問い合わせ先: 福永武彦研究会 三坂 剛  メール:  Fax:044-945-0666
 
 ◇当サイトより会誌の購入ができます。
   現在庫のある第1号~3号、6号~13号の会誌を購入希望の方は、「研究会 会誌」のページ
   ご覧下さい。神田の八木書店軽井沢高原文庫でも会誌を購入できます。
          
    

 ◇福永武彦関連 新刊2点(2015/3/26)
  ・堀辰雄/福永武彦/中村真一郎(池澤夏樹編集 日本文学全集17)
    福永武彦:「深淵」「世界の終り」「廃市」
    堀辰雄:「かげろうの日記」「ほととぎす」
    中村真一郎:「雲のゆき来」を収録

              
  ・「草の花」の成立―福永武彦の履歴/田口 耕平

  
 
  

 
 書影付き著作データに以下の資料を追加しました。
   
◇「小説風土」(完全版)(決定版)(新潮文庫版):掲載ページ
  書影クリックで拡大画像にリンクします。

 
(完全版 表紙)

限定1000部 
1957.6.15 東京創元社 1000円
扶桑印刷・A5判変型・丸背紺布装・函・番号入・453頁 旧かな・旧字
「風土後記」57年5月(2頁)、「著作目録」(2頁)、「目次」(2頁)

*私家版30部本あり(1~30) 1000部版と同判、同装幀
*省略版に、過去を扱う第二章を増補しただけでなく、本文全体に大幅な手入れ。
 
(完全版 扉)

第2部が増補され、はじめてロマンとして完全な姿で読者に提供した本書扉に『小説風土』と明記した意味は大きい。
奥付にも「小説風土」とある。
 
(決定版 表紙)

1968.12.10 新潮社  700円
二光印刷・46判・丸背深緑布装・函・帯・417頁 新かな・新字
「解説」丸谷才一、装幀 岡鹿之助

*完全版本文に、更に全体に渡って手入れがあるので「決定版」と呼ぶ。奥付に決定版との表記がある。
 
(新潮文庫版)

1972.6.15  新潮社  220円
光邦・文庫判・紙装・カヴァ・429頁 新かな・新字
「解説」丸谷才一(決定版と同文)、カヴァ装幀 岡鹿之助

*表紙は決定版の函と同一
    

  
◇評論:掲載ページ
  書影クリックで拡大画像にリンクします。

 
   

「ゴーギャンの世界」元版

 1961/7/5 新潮社 700円

二光印刷・A5判・丸背厚紙装,背クロス・函・帯
324頁(他に圖版30頁,「年表」と「文獻目録」で43頁)
*近親者だけに配付した30部限定の「別刷後記」(3頁)あり(全集第19巻に附録として収録)

   (前川康男宛 福永自筆の献呈・後書き)
 
献呈先の前川康男は、福永が『ゴーギャンの世界』を執筆している際の担当編集者の1人。もともと児童作家志望で、新潮社を退社して後、多くの著作がある。

  
◇雑誌: 掲載ページ
  書影クリックで拡大画像にリンクします。

  「高原文庫」№2 「四季」第66号
 
   発行所:軽井沢高原文庫
 編集人:池内輝雄 発行人: 藤巻勲夫
 1987/7/1 500円

*座談会 福永武彦・文学の形成と発展―その深淵を探る試み 辻邦生・豊崎光一・曽根博義・鈴木貞美・池内輝雄 他。
 発行所: 四季社 編集兼発行者:日下部雄一
 1942/6/27 40銭
 
*マラルメ「エロディアド」の翻訳を巻頭に掲載(4頁~19頁)。他に、中村眞一郎の小品「窓」、小山正孝の詩「路上」など。画像3点は、(復刻でなく)オリジナル雑誌の表紙、目次、裏表紙。


 
 

     
◇第178回例会 New!
 日時:2019年9月29日(日) 13時~17時
 場所:川崎市平和館 第2会議室
   
【例会内容】
 ① 討論:『贋金つくり』(A.ジッド)
 ② 会誌第14号の進捗状況報告、その他
    
【例会での発言要旨・感想・】順不同(敬称略)
 Kiさん:「独身者」(および他の福永作品)における「贋金つくり」(アンドレ・ジイド)の影響について
  「独身者」他の福永作品の枠組みが「贋金つくり」の影響を受けていると感じられた。以下に概要をまとめた。
  • 1.福永の「贋金つくり」についての言及(「独身者」後記(1975年)より)
     『独身者』の主題は、「日記」によれば、「1940年前後の青年たちを鳥瞰的に描いて愛と死と運命とを歌う筈」だったし、そのために10人以上の人物が相互に絡み合って複雑な絵模様を見せることになっていた。「日記」の中には彼等がどういう運命を辿るのか、すべて予測してある。そして私には、小説というものはこうした綿密なプランに則って書くべきものだという先入観があった。私はアンドレ・ジイド― 特にその『贋金づくり』― とオルダス・ハクスリー ― 特にその『対位法』― の影響を受けていたようである。そのことが、かえって小説を書きづらくしていたことを、私は後に知った。しかし当時私に必要だったものは、この長編小説の全体的構想、神の視点からする隅々までの透視だったに違いない。
    2.「贋金つくり」(1926)作品概要
    ・ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典による
     フランスの作家アンドレ・ジッドの小説。 1926年刊。作者が小説 (ロマン) と呼んだ唯一の作品で、他のものは物語 (レシ ) あるいは茶番 (ソティ) の名で呼ばれている。私生子ベルナールの精神の彷徨を扱うこの作品を書くにあたって著者は「純粋小説」を唱え、小説以外の要素の排除に努めた。その間の問題は,『贋金つくりの日記』 Journal des Faux-Monnayeurs (1926) に詳しく語られている。
    ・岩波文庫カバー
     ジイドが贋金使用事件と少年のピストル自殺という2つの新聞記事に着想を得て、実験的手法で描いた作品。私生児の生れに劣等感を抱く青年や作者の分身とも思われる作家、少年を使って贋金を流す男、級友のいじめにより強いられて自殺する少年など、無数の人物が登場して錯綜した事件の網目模様を繰り広げる。作者がみずから<小説(ロマン)>と名づけることを初めて認めた自信作で、同一事件を何人もの口から語らせ、多角的な照明を当てることによって読者のみがその事件の全貌を知るように仕組む。作者の一面的な主観が投影された、特定の主人公を中心に筋が展開する従来の小説の概念を破壊し、20世紀の文学の流れを方向づけた記念碑的作品。
    3.「独身者」他、福永の小説との共通点
    1)多数の人物が相互に絡み合って複雑な絵模様を見せる物語構成(「独身者」、「贋金つくり」では20人以上)
    2)「独身者」では、章毎に場面と登場人物が変わり、その場に居合わせた複数の人物により様々な話題が議論される(「贋金つくり」では文学関連が多い)。
    3)同一の事象が複数の人物の視点で語られ、時間の流れの方向も一律ではない(福永の小説では、「死の島」、「海市」など)。
    4)登場人物のプロフィール
     ・作者ジイドが相当部分投影されている小説家エドゥワール(「独身者」小説家志望の小暮英二に対応)
    「贋金つくり」「独身者」いずれも独立した章をエドゥワールの日記(12の章:全体の1/3)、英二の日記(第9章)に割り当て、「贋金つくり」では、日記の章とは別の「エドゥワール、小説に関する意見を述ぶ」の章の中で自らの小説に対する考えを述べさせている。「贋金つくり」は、エドゥワールが現実に取材しつつ構想している小説でもあり、作品全体が二重構造になっている。
     ・登場人物の愛の相関図
     「贋金つくり」「独身者」では複数の愛が平行的(対位法的)に描かれている(「贋金つくり」では、同性愛が絡んでいる)。
    5)クラシック音楽
     いずれもバッハ(対位法の頂点とされる作曲家)に言及している(「独身者」第5章)。
    「贋金つくり」では「エドゥワール、小説に関する意見を述ぶ」(第2部3章)でベルナールに対し、自分が書こうとしている小説「贋金つくり」について「僕が狙っているのは、フーガの技法(注1)といったものなんです。それで、音楽で可能なことが、なぜ文学で不可能なのか、合点がいかないのだが・・・・」
     注1)「フーガの技法」は、バッハが対位法の様々なフーガ形式を追及して作曲した抽象的作品(演奏楽器が指定されていない)。
    6)前衛的手法(福永の小説では、「飛ぶ男」など)
     ・ベルナールの前に唐突に天使が現れ、共に行動する(第3部13章)。
     ・小説の中ほどに作者が作中人物を批評する章が置かれている(第2部7章)
       ・・・目先のきかない作者も、しばし立ち止まり、息をついで、不安げに、我が物語は自分をどこへ連れて行くのだろうと、自問する。(冒頭の段落より)
      エドゥワールは、一再ならず私をいらだたせた・・・・
      エドゥワールで気に入らないのは・・・・

    4.エドゥワールの小説観
     エドゥワールは会話の中で、また手帳(日記)に小説についての自分の考えを記している。エドゥワールの考えは、そのままジイドの小説観を示している思われる。
    (「エドゥワールの日記」、「エドゥワール、小説に関する意見を述ぶ」からの部分引用)
     小説から、特に小説本来のものではないあらゆる要素を除き去ること。(中略)人物の描写でさえ、本来小説に属するものとは私には思えない。然り、純粋小説は、そんなものに意を用いるべきではないように思われる。(中略)小説家は、通常、読者の想像力に十分の信頼を置いていない。(第1部8章)
    ・・・僕はそういう効果をあげるために、一人の小説家を仕立てて、これを中心人物に据えるんです。そしてお望みならば、作品主題と言ってもいいが、その主題は、現実がその小説家に提供するものと、小説家が現実を料理しようとしているものとの闘争といったものです。(第2部3章)
     私の作品の<根本の主題>とでも呼ぶべきものが、どうやらわかりかけてきた。それは、現実の世界と、現実からわれわれが作り上げる表象との間の競合である。外界はわれわれに自分を押しつけてくるし、われわれはそれぞれの解釈を外界に押しつけようとする。その押しつけ方が、われわれの生活のドラマをなすのだ。・・・(第2部5章)

    「贋金つくり」という小説自体が、以上のようなエドゥワール(ジイド)の小説観を具現化した内容となっていると考えられる。
    5.「贋金つくりの日記」(1919年6月~1925年5月)に示されたジイドの小説観
     特別にこの小説と深い関係のない要素は、すべてこの小説から追い出してしまうこと、混合によって何の優れたものが得られないのが常だ。 (中略)
    エドゥワールを刺激して、彼が夢想している小説を創作させるには、かつて何人も彼が心に描いているものほど純粋な小説を書いたことがないという確信が必要なのだ。しかも、この純粋小説を、彼はついに書き上げる日はないはずだ。(1922年11月)

     人生は、あらゆる方面から、劇の糸口を豊富に提供してくれる。但し、人生が提供する劇の糸口は、小説家が扱う場合と異なって、それが継続し、結末に達することは極めて稀である。僕が自分のこの小説を読む人に与えたいと思う印象がこれだ。またエドゥワールに言わせようと思うところもまたこれだ。(1924年11月)
    僕が新しい創作をしようと思うのは、決して新しい人間を描きたいためではなく、実はそれらの人間を現わす新しい手法のためだ。この現に書きつつある小説は、唐突に終わる筈だ。それも決して主題が枯渇したがためではない、主題はむしろ汲みつくせないという感じを与えるべきだ。むしろ、それとは反対に、主題の拡張、主題の輪郭の遁走そのものによって終りを告げるようにするのだ。主題にまとまりがついたりしてはいけない、それはむしろ散り散りになり、崩れなければならない・・・。(1924年3月)

    6.福永武彦「二十世紀小説論」における「贋金つくり」への参照
    「純粋小説」の章より(p234)
     「贋金つくり」」において、すべての人物の容貌などはごくあっさりとしか描写されていず、19世紀の小説と較べてみると驚くばかり手が抜いてある。それでいて数多い人物が見事に書き分けられている。それは作者が人物の正確な顔かたちを描かなくても、読者の想像力によって、人物が読者の意識の内部に生きているからである。つまり小説は、読者からみれば一種の内的持続であり、作者の想像力は読者のそれと重なり合うことによって、或は特にその協同作業を意識して読者に働きかけることによって、そこに一つの共通の小世界を作り上げることになる。
 Haさん:『贋金つくり』について
  • 1.アンドレ・ジッドの主な小説
    アンドレ・ジッド(1869-1951)の小説の刊行年: 
    ①アンドレ・ヴァルテールの手記1891 ②鎖がやわだったプロメテウス1899 ③背徳の人1902 ④放蕩息子の帰宅1907 ⑤狭き門1909 ⑥イザベル1911 ⑦法王庁の地下牢1914 ⑧田園交響曲1919 ⑨贋金つくり1926 ⑩女(つま)の学校1929 ⑪ロベール1929 ⑫ジュヌヴィエーヌ1936 ⑬テーセウス1946 
    2.ジッドによる小説(散文虚構作品)の分類     
    ①レシrécit(回顧談):一人の語り手を中心として少数の人物の生き方を追憶の形で追う一連の作品(例:③背徳の人、④放蕩息子の帰宅、⑤狭き門、⑥イザベル、⑧田園交響曲、⑩女の学校、⑪ロベール、⑫ジュヌヴィエーヌ、⑬テーセウス)
    ②ソチsotie(滑稽譚):型にはまった人物からなる風刺作品(例:②鎖がやわだったプロメテウス、⑦法王庁の地下牢)
    ③ ロマンroman(小説):多数の登場人物に付随する数々の視点をもっており、一点に収斂しない作品(例:⑨贋金つくり)
    3.『贋金つくり』(1921-1925執筆、ジッドの唯一のroman)(二宮正之訳、アンドレ・ジッド集成第Ⅳ巻所収、筑摩書房、2017)
    (3-1)登場人物と視点人物
    ・『贋金つくり』の主な登場人物を付図1(省略)に、視点人物とその表記を付表1(省略)に示す。
    ・『贋金つくり』は全三部四十三章から成る。また「エドゥアールの日記」が章全体の1/3の16の章を占める。
    ・約30名の登場人物が10名の視点人物(筆者、オリヴィエ、ベルナール、エドゥアール、ヴァンサン、ボリス、ジョルジュ、ゴントラン、ストルーヴィル、パッサヴァン)の視点から描かれている。
    ・「エドゥアールの日記」では、視点人物のエドゥアールは一人称(“僕”)で表記され、作者は表面に出てこない。
    ・作者は“筆者”または“私”(原文ではいずれもje、第一人称単数の代名詞)で表記されている。
    ・視点人物が作者または「エドゥアールの日記」の中のエドゥアールである場合以外、地の文では視点人物はすべて三人称(固有名詞)で表記され、作者が視点人物を描写している。
    (3-2)主題
    ・各章の主題を付表2(省略)に示す。
    ・全体の主題:一点に収斂しない。ベルナールをめぐる話、オリヴィエをめぐる話、エドゥアールをめぐる話、その他多くの論点が描かれている。
    (3-3)『贋金つくり』についての百科事典の記述:
    「人間は仮面によって、すなわち<贋金>を使って生きている・・・・始めもなく終りもない人生図を、視点を多様化・多層化し、作中に同名の小説を構想している小説家を登場させ、その創作日記に大きな役割まで与えて、多次元的に描き出そうとした」(大百科事典2007、平凡社)
    (3-4)福永武彦の『贋金つくり』と『獨身者』への言及:
    「「独身者」の主題は、「日記」によれば、「一九四〇年前後の青年達を鳥瞰的に描いて愛と死と運命とを歌ふ筈」だったし、・・・私はアンドレ・ジイド――特にその「贋金つくり」――とオルダス・ハクスリィ――特にその「対位法」――の影響を受けていたようである」(「独身者」後記1975)
    4.その他
    〇3つの日記の役割
    ・エドゥアールの日記:エドゥアールが『贋金つくり』を書いている。
    ・『贋金つくり』の日記(1926年刊行):『贋金つくり』についての作者ジッドの創作ノート。 *
    ・アンドレ・ジッドの日記(1921-1925年の部分):『贋金つくり』を書いていた期間のジッドの生活と思索、『贋金つくり』と『贋金つくりの日記』を相対化する(一歩離れたところから見る、別の見方をする)。
    *「「独身者の日記」は、作者の日常の生活と「独身者」の構想から成っていて、・・・それに作者の小説論が加わる。」(「独身者」後記1975)。すなわち、福永の「独身者の日記」はジッドの「『贋金つくり』の日記」と「日記(1921-1925)」の両方の内容を含む。
 Miさん:
  •  Kiさん作成の「独身者(および他の福永作品)における「贋金つくり」の影響について」、そしてHaさん作成の「『贋金つくり』についてのメモ」は、共に極めて有用な資料なので、出来るだけ多くの会員に眼を通していただきたいものです。
     毎日、福永武彦電子全集解題執筆と書誌作成、そして底本の準備で忙殺されています。
    電子全集のミス箇所は、出版社が再納品すれば、既に購入済みの読者にもその修正版が自動的に入手できるメカニズムになっているとのことで(説明できませんが)、出来るだけその線で対応すべく交渉しています。
 Aさん:福永武彦の音楽(番外編)
  •  今をすぐる40数年前の晩秋、昔は市内にも数件はあった「クラシック喫茶」の1つである某店の椅子に深く身を沈めつつ、新潮文庫の『忘却の河』を読み進めていた。その時に何がかかっていたのか忘れたけれども、店主がおもむろに針を落とすと正面の対になったタンノイだったか、マッキントッシュだったか、その大きなスピーカーからはしっとりとした音楽が流れていた気がする。だからだろうか、読み進めるうちに最終章「賽の河原」に移ったあたりから、予期せぬ「魂」の揺さぶりに襲われた。流れる音楽からも、店内の人々からも隔絶され、唯「孤立した空間」に周りから閉じられる形で唯一人、無言のまま「慟哭」の只中にいた。いいようのない感情に支配され、言葉を失い、只々時間だけが流れていた。「孤立した空間」で主人公、あの男の、根無し草のような、移ろいゆく俗世間の世事にもまれ、流されながら自身の業と向き合う男、その男に「何」かを見、そして自身をダブらせていたのであろうか。
     「小説空間」に身をゆだねることで、初めて「魂」が揺さぶられた私の内面世界は、「初めて」福永武彦の小説世界に入り込み、福永の小説世界の「主調音」に同調し、また同化しながら、福永の「忘却の河」を成していた精神世界と渾然一体となっていた。
     おそらく、私は、初めて「福永武彦の小説」を読み、従って「初めて小説を読んでいた」のだと思う。深遠な小説世界に入り込み、魂の揺さぶられる精神世界を体験することで、作家の「魂に渦巻く高まり」と同調する稀有な瞬間がそこには間違いなくあったと思われる。その稀有な瞬間こそ、福永武彦の作品が持つ、他のどの作家にもない圧倒的な「美」の世界がもたらす「至福の時」であると思っている。
 ◇第177回例会以前の例会報告
  例会報告のページをご覧下さい。


   

  •  福永武彦研究会  三坂 剛   メール misaka@siren.ocn.ne.jp
                      Fax  044-945-0666
  

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福永関連著作(既刊)
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福永武彦 電子全集16 New!
『夢のように』
随筆の家としてⅡ

 
 
福永武彦 電子全集15 New!
『別れの歌』
随筆の家としてⅠ

 
  
福永武彦 電子全集13 New!
10月18日配信
『風のかたみ』
古典文学の継承


 
 
福永武彦 電子全集12
『忘却の河』『幼年』、童話



福永武彦 電子全集10
『ゴーギャンの世界』、
彼方の美を追い求めて



福永武彦 電子全集9

『完全犯罪』、
推理小説の領域

 
 
福永武彦 電子全集7

戦前の文業(散文)、
大河小説『獨身者』

 
 
福永武彦 電子全集6
『ボードレールの世界』、
福永翻訳小伝『ボードレール』
『悪の華』「新・悪の華」、
『パリの憂愁』他

 
 
福永武彦 電子全集5

「廢市」、「告別」等、
中短12篇を収録



福永武彦 電子全集4
短篇集『心の中を流れる河』、
『世界の終り』、
長篇『夢の輪』収録


 
福永武彦 電子全集3
先鋭な実験『夜の三部作』、
そして『愛の試み』


 
福永武彦 電子全集2
『小説風土』全4種を完全収録



 
 
 
福永武彦 電子全集1
「草の花」「塔」他の初期作品




 
「加田怜太郎 作品集」
小学館(P+D BOOKS)
(2017/5/9 復刊)


 
「夢見る少年の昼と夜」
小学館(P+D BOOKS)
(2017/4/11 復刊)




「廃市」
小学館(P+D BOOKS)
(2017/7/11 復刊)




「夜の三部作」
小学館(P+D BOOKS)
(2016/8/8 復刊)




「風土」
小学館(P+D BOOKS)
(2016/7/5 復刊)




「海市」
小学館(P+D BOOKS)
(2016/6/13 復刊)




「死の島(上)」
(講談社文芸文庫)
福永文学の頂点
(2013/2/9 復刊)



 
「死の島(下」
(講談社文芸文庫)
(2013/3/9 復刊)


 

「草の花」(新潮文庫)
最もポピュラーな作品




「忘却の河」(新潮文庫)
一番好きという人が多い




「告別」(講談社文芸文庫)
代表的中編小説




「風のかたみ」(河出文庫)





「愛の試み」(新潮文庫)
愛をめぐる傑作エッセイ




「草の花」英訳版
(2012/4/24 発売)




「福永武彦新生日記」
(2012/11/30 発売)



「福永武彦戦後日記」
(2011/10/27 発売)



 
新潮日本文学アルバム
福永武彦



 
堀辰雄/福永武彦/中村真一郎
池澤夏樹編集 日本文学全集17



 
福永武彦とその時代
/渡邊一民



 
「草の花」の成立
―福永武彦の履歴/田口 耕平





 
福永著作(文庫古書)

「風土」(新潮文庫)
処女長編小説





「海市」(新潮文庫)
長編恋愛小説



「夢見る少年の昼と夜」
(新潮文庫)短編小説集






「廃市・飛ぶ男」
(新潮文庫)短編小説集





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